老荘思想は危険か?

老荘思想の中心は道であり、無為自然。
そんな考え方が好きです。

でも、以前、老荘思想が好きだって
人に伝えたとき、
やめた方がいいって、
危険思想のような言われ方を
したことがありました。

確かに、老荘思想は神仙思想とも言われ、
不老長生、超自然や怪奇など、
陰陽道(おんみょうどう)へもつながる
うさんくさい側面があることも事実です。
徹底した平和主義であり、
権威や暴力を嫌う人生哲学であるがゆえ、
ともすれば、勤勉を欠くもの、
隠遁を奨励するものとして、
国策上 危険、邪道とみなされていた
ことも事実でした。

時代の変遷とともに変わってしまう
人の道を説く儒教とは違って、
老荘思想は、宇宙や自然の理法、
永遠不変の道を説いています。
吉田兼好、良寛、夏目漱石なども、
みんな老荘の影響を受けています。
それほど根本的な考え方です。

老荘思想のすべてを
語れるほどの知識はありませんが、
老荘思想には、
生きるのが楽になるような
考え方の部分がいっぱいあります。
私も大いに勇気づけられました。

山水への美意識の芽生え

老荘思想を背景にもつ隠遁思想が広がり、
人々は山水に隠遁、
あるいは それに憧れました。
その結果、山水にこそ「真」があり、
山水には「美」があると、
認識されることになりました。

すなわち、中国の美意識は、
隠遁の生活から得られ、
老荘思想の影響を大きく受けました。
これは五世紀頃のこと。
この自然観が、以降の中国にも
伝統として伝わっていきます。

一方、ヨーロッパでは、
キリスト教の影響から、
人間を 自然より上位なもの
とみなしていました。
ヨーロッパにももちろん
美しい山河はありましたが、
自然を美の対象とみたのは、
18世紀フランスの
ジャン・ジャック・ルソー
「自然に帰れ」。

日本は7~8世紀 万葉の歌人たちが、
自然の美しさと一体となって
それを表現しています。
この精神は以後も変わることなく
受け継がれていきました。
中国文学の影響もあったかもしれませんが、
なにより日本の美しい山河が、
日本人の感受性を
刺激したのかもしれません。

山水を美しいと感じる心・・・
国によって歴史もやはり違うんですね。

自然豊かな日本に生まれてきてよかった。
隠遁しなくても、自然が身近にあり、
隠者でなくても、美しさを感じる
ことができるのですから。

とはいえ 煩わしい世俗と離れて
自然の中で暮らす隠遁生活には憧れます。