「もし明日世界が滅びようとも
私はなおリンゴの苗木を植えるだろう」
ヘルマン・ヘッセ
「庭仕事の愉しみ」から。
この本は、庭にまつわる
ヘッセの詩やエッセイ、作品を集めたもの。
ヘッセの自分の庭に対する強い思い入れが
伝わってきます。
ヘッセは20世紀前半の
ドイツを代表する文学者。
都会から離れた
眺望のよい田舎での暮らしを好み、
非常に多くの時間を
庭いじりに割いていました。
庭のない家に住み、
庭仕事ができないときは、
水彩画を自力で習得し、
植物を観察することで
庭仕事の代わりにしていたように
思います。
ヘッセは歳をとるとともに
眼の痛みがひどくなり、
長時間の読書や著述が
できなくなっていきました。
そんなときにも、庭仕事や焚き火は、
重要な気分転換の時間だったようです。
そしてそれは
瞑想や想像の世界に浸り込む
重要なひとときでもありました。
ヘッセも書いています。
「一区画の土地に責任をもつ」ことの
歓びと愉しみ。
花づくり、野菜づくり、
草むしり、焚き火などの庭仕事。
眼の痛みや疲れをいやしたり、
文筆の仕事や
日常生活の雑事からの解放感、
思索と新たな創造を生む
素晴らしい瞑想のひととき。
花は毎年、自然に花を咲かせます。
それは太古の昔から繰り返されていること。
栄枯盛衰のある人間界とは
関係のない秩序が存在します。
庭仕事をして、
自然との交わり合いの中に
身をおくことは、
大きな秩序の中で
絶対的な平安を得ること。
それが、冒頭の言葉
「もし明日世界が滅びようとも
私はなおリンゴの苗木を植えるだろう」
につながっていく。
やっぱり ルーティンって大事。
また実感。