水上 勉さんの「良寛」から。
良寛のうたった詩の現代語訳です。
独りで生れ
独りで死に
独りで坐り
独りで思う
そもそもの始まり、それは知られぬ
そもそもの終わり、それも知られぬ
この今とは何か それもまた知られぬもの
展転するものすべて空である
空の流れの中に しばらく我がいるのだ
だから是もなければ非もないはず
そんなふうに わしは悟って
こころゆったりと
時のすぎるのにまかせておる
静かな夜の窓の下で
衣をととのえて坐禅を組んでいる
臍と鼻の穴をまっすぐにおくと
耳が肩まで垂れてくるではないか
窓が白くなった 月が出たのだ
しずくがひとつひとつ落ちる音がする
雨もやんだ
このひとときのこころもち
ああ たださびしさがあるだけだ
ほかのものはなにもありはしない
水上勉さんはこの詩に対し
「うつくしい詩だと思う。
孤高の境地が伝わってくる。」と。
私もうつくしい詩だと思います。
静けさが伝わってきます。