だいぶ昔、高校の現代国語の授業で
夏目漱石の作品を扱ったとき、
先生が言いました。
「生きることを真剣に考えると、
行きつく先は、死か、狂気か、宗教か、
しかない。」
そのとき、それを聞いて、
本当にそのとおりだと思いました。
すごく印象に残ってます。
そして今でもそのとおりだと
思っています。
今、改めて調べてみると、
夏目漱石『行人』の一文に、
「死ぬか、気が違うか、
それでなければ宗教に入るか。
僕の前途にはこの三つのものしかない。」
と書かれていることが分かりました。
あくまで「生に真剣に向き合ったら」
ということで、
私は、これまで怖くて、まだ一度も
生きることに、真剣に向き合えていません。
真剣に考えたら、
自殺するしかなくなるか、
発狂するに至るか、
生きるために宗教に走るか・・・
そのとおりだと思いつつ、
目をそらして暮らしています。
でももちろん作家である漱石は違います。
生を、作品を通して突き詰めていきます。
漱石は、自殺はできず、
狂気にもなりきれず。
晩年は禅宗に傾倒していったようです。
「則天去私(そくてんきょし)」は、
漱石が最晩年理想とした心境。
我執を捨て去り、
諦観にも似た調和的な世界に身をまかせる
こと、と解釈されています。
私はこれを、
道教の「無為自然」に通じるものだと
思っています。
「天に任せる」
やはり良寛にも近いものを感じました。