石英の音

「カチリ
 石英の音
 秋」

石英のカチリという澄んだ音に
圧倒的な秋を感じます。

3行で秋をみごとに表したこの詩。
この詩は、以前、
新潮文庫の百選を紹介した冊子に
掲載されていたもので、
とても印象に残るいい詩だと思って、
ずっと記憶のなかにありました。
毎年、秋の高い青い空を見ながら
この詩を思い出します。

そして調べてみたら、
文豪の井上靖さんが中学生のとき
友人から見せられた詩だとか。

「中学三年の時、
 友人からこういう自作の詩を
 見せられたことがある。
 それから六十余年、
 私はついにこの詩から
 自由になれないでいる。
 秋になると、どこからか
 石英の触れ合う音が聞えてくる。
 その友はとうに他界したが、
 秋になると、
 両手に石英の欠片を持って、
 どこからか現われてくる。」

井上さんに生涯、
この3行の詩が影響を与えたと思うと、
詩って、言葉って、
すごい力があるって思いませんか。

秋の澄んだ空気。
遠くの山まで見通せる青い空。

ちょうど今。
山は紅葉のまっさかり。

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